2011年04月20日

2011年4月20日 日経産業新聞(中小・ベンチャー)

2011年4月20日(水)中小・ベンチャー面
記者:宇野沢晋一郎
見出し:日本M&Aセンター 三宅社長に聞く 復興需要、対応へ相互補完 遠隔地間などM&A増加も


東日本大震災では多くの中小企業が被害を受けた。取引先の被災で必要な資材の調達が滞っているケースも目立つ。大震災は、今後、中小企業の経営にどのような影響を与えるのか。中小企業の合併や買収を仲介している日本M&Aセンターの三宅卓社長に聞いた。
−被災地とその周辺の中小企業の現状は。
 「被災地では余震が相次いでおり、細かい加工を手がけている製造業への影響が特に大きい。流通網が十分に回復していないので、部品や材料の調達が完全にできない企業も多い。リーマン・ショックからようやく回復してきたところにダメージを受けた格好で、(中小企業の)経営悪化につながりかねない状況だ」
 「一方で、被災地に近い地域の中小企業からは『創業以来の大量の注文が来ている』との声も聞かれるようになった。家屋などの生活インフラは失われたが、復興が始まり大きな需要が生まれつつあるのだ。回復しない供給と増えつつある需要。ミスマッチが生じている」
−中小企業の経営立て直し一環で、M&A(合併・買収)という手段にも注目が集まりそうだ。
「仮設住宅の資材など、増産が追いつかないケースが見られる。生産手段が足りてない会社がM&Aを利用して、生産能力を持ちながら苦境に陥っている被災地周辺の企業とつながれば、ミスマッチは解消に向かうかもしれない。このようなM&Aは被災地周辺の雇用を守ることにもつながる」
「従来、中小企業のM&Aは近い地域の企業間で成立するケースが多かった。しかし震災後は(調達などのリスク管理の観点から)遠隔地の企業間で相互補完するケースが増えそうだ」
「また『部品会社と完成品会社』や『建築会社と資材を運ぶ運送会社』のような川上と川下の関係にある企業間でもM&Aが増えそうだ」
−復興には東日本の人々の心理が好転することも欠かせない。
「政府は被災地の再建に向けた取り組みを急ピッチで進めるはずで復興需要は比較的早くから本格化するだろう。今のボトルネックを戦略的に解消した企業はプラスの面も見え始めるはずだ」
「阪神大震災の時、私は兵庫県宝塚市で被災した。神戸市を中心に交通網が遮断され、当時は西日本が全滅するとさえ思った。今回、東京の人の意識はその時の心境につながるものがあると思う。徒歩で帰宅したり、計画停電や原子力発電所の事故を間近で経験したりしているため、被災地に似た心理状態にある」
「電力不足は復興の足かせだが、西日本の企業との連携などで乗り切れるはず。住宅建設などの需要が本格的に見え始めると、東日本のマインドも少しずつ変わってくると思う」
(聞き手は宇野沢晋一郎)


【キーワード】
・東日本大震災という大時流と中小企業の関わり
・中小企業の専門家

posted by メディアウォッチャー at 11:00| Comment(4) | 日経産業新聞(中小・ベンチャー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月19日

2011年4月18日 産経新聞生活面

2011年4月18日(月)生活面
記者:日出間和貴
見出し:「暗さ」「陰影」歓迎するムードへ 東京の夜は明るすぎた


東日本大震災の影響で、首都圏を中心に繁華街のネオンが消え、経済活動が停滞ムードに包まれる。一方で、節電が暗さに対する日本人の意識に変化をもたらしている。「陰影」という日本建築の概念に光が当てられ、夜の暗さを再評価する機運が出てきた。「東京の夜はこれまで明るすぎた」−そんな自戒の念が聞こえてくる。(日出間和貴)

明るさの余韻楽しむ
 東日本大震災から一カ月近くが過ぎた4月上旬、東京都内の駅構内で「地下鉄の暗さ」について、2人の中年男性が気になる会話をしていた。
「震災以降、東京の地下鉄はまるでロンドンのように暗くなった」
「ヨーロッパを旅すれば分かるけど、駅の構内はこんなもの。この暗さにもだんだん慣れてきた」
 企業や家庭で進められる節電の励行。夏場に向けた電力抑制を控え、まちの暗さを受容する感性はさらに歓迎されていいはずだ。
 昼から夜へ、明るさの谷間に当たる「たそがれ時」に対する意識は、国民性や気候風土が反映される。日本の夜の明るさや派手なライトアップに長年、疑問を投げかけてきた東京工大の乾正雄名誉教授(建築工学)によると、日本では日没の1時間前に照明をつけるが、ヨーロッパではほぼ日没の頃。明るさの余韻を惜しむかのように照明をなかなかつけないという。
 乾名誉教授は、過度に明るい夜間の環境が「人に常に動き回ることばかりを強いて、じっと考える能力を喪失させたことはうたがいようがない」と、『夜は暗くてはいけないか』(朝日新聞社、1365円)で指摘する。確かに、こうこうと輝く蛍光灯のもとでは哲学することは向かない。
 昭和8年、作家の谷崎潤一郎(1886〜1965年)は47歳のときに日本家屋が織りなす薄暗さの美について論じた『陰翳礼讃』を刊行した。この一冊は、海外の建築家の間でも建築思想の「手本」として読み継がれてきた。
 米国の現代美術家、ジェームズ・タレルも影響を受けた一人。設計した宿泊・体験施設「光の館」(新潟県十日町市)の館内には、光を知覚するさまざまな仕掛けが施されている。「来館者は寝泊まりしながら、自然光と人工光が織りなす『陰影の美』の作品世界を肌で触れることができる」(同館)。明るさに慣れた都会人に、夜の闇と隣り合わせだった時代へのタイムスリップが人気を呼んでいる。
 
無駄な光をなくす
 一方、全国に先駆けて平成元年に「光害防止条例」を制定した岡山県美星町(現井原市)。天文台のある美星町の区域内に適用される条例で、過剰照明の自粛を呼びかけ、夜10時以降は各家庭でも消灯することを励行する内容だ。条例には「美しい夜空を見よう」という目的があり、星の見え方は市民のモラルにかかっている。
 美星天文台の綾仁一哉台長は「暮らしの中から無駄な光をなくし、照明を水平よりも上に向けないようにするだけでも星はきれいに見える。都会の空に本来の夜空が戻ることは、節電による一つの形といえる」と評価する。
 谷崎の『陰翳礼讃』にある一節。<暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った>
 「闇の世界」を完全に忘れ去る前に、現代人が心に留めておきたい警句といえる。


【キーワード】
・東日本大震災→「節電」という大時流
・実は昔から先駆けて「暗さ」の重要性を説いていた研究者や自治体
・「明るいのが普通」→「暗さを見直す」という変化
posted by メディアウォッチャー at 19:14| Comment(0) | 産経新聞(生活面) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月08日

2011年4月8日 読売新聞経済面

2011年4月8日(金)経済面
記者:西原和紀
見出し:日本橋洗浄 「次はお濠を」
(アルフレッド・ケルヒャー ハルトムート・イエナー会長 45歳)


 3日で架橋100周年を迎えた国の重要文化財「日本橋」(東京都中央区)を洗浄し、日本の中心にふさわしい名橋の品格をよみがえらせた。
 2001年から、ドイツに本社を置く世界最大の清掃機機メーカーの会長を務めている。日本橋の洗浄は社会貢献活動の一環で、10年11月から、専門家など5人がかりで自社の高圧洗浄機などを使って行った。石造り2連アーチ橋の側壁や欄干は本来の白さを取り戻し、「とてもすてきな橋になり、自分でも驚いた」と満足そうだ。
 ただ100年の汚れを落とすのは容易ではなかった。一方で、歴史的な記録は残そうと、東京大空襲の際に焼夷弾が当たった焦げ跡は消さないように配慮したため、作業を終えるまでに約6週間もかかった。
 「素材を傷めずに汚れを落とすために、科学的な研究を続けている」といい、これまでにニューヨークの自由の女神像やベルリンのブランデングルク門など世界約100か所で歴史的建造物や彫像の洗浄・再生を手がけた実績を持つ。
「建物などを見ると、必ずきれいにした方がいいなと思ってしまう。汚れていたら、その価値は損なわれてしまうから」と力説する。
 現在、約2000種類の業務用や家庭用の清掃機器を約190か国で販売している。1988年に設立した日本法人(宮城県)の10年の売上高は約84億円だった。だが、潜在的な需要を取り込めば800億円まで拡大できると見込む。
 「食事はスシだけで生きている」というほどの日本びいきだ。蓄積したきたノウハウを駆使し、「次は皇居のお濠をきれいにしたい」と“夢”を語る。




【キーワード】
・海外の企業が、日本の伝統的な日本橋を洗浄するという意外性
・「100年の汚れを落とす」という、プロジェクト自体の面白さ
・海外での実績と、日本でも「800億円なる」という見通し
・当プロジェクトについては、2011年2月7日に発表済み
 (http://www.karcher.co.jp/news/news_20110208.html
・「経済ひと点描」は、原則的に毎週金曜日掲載
posted by メディアウォッチャー at 11:00| Comment(5) | 読売新聞(経済面) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。